
不動産の売買・賃貸に関するサービスを考えた時、ベトナムの現状は先進国のそれと比べ、未だ劣っている面があることが否めません。不動産を取り巻くトラブルも少なくない中、いかにスムーズに取引や管理を進めれば良いのでしょうか。ハノイで7年以上に渡り日系企業や日本人クライアントに寄り添ってきた仲介会社・トンキン不動産の村尾駿CEOにお話を伺ってみました。
取材:2019年9月

ベトナムは空前とも言える外資進出ブームと言える状況に差し掛かっています。現状の不動産市場のトレンドはどのようになっていますか?

ハノイやホーチミン市といった、ベトナム2大都市の一等地の不動産価格は、日本の地方都市の相場とそれほど変わらないレベルに達しています。近年の推移の様子を見ると、2008年に起きたリーマンショック前をピークとし、そこから一度下落。その後、緩やかに右肩上がりになっているといったイメージでしょうか。

ハノイの不動産市場の発展も期待できそうですが、今後の流れはどうなるでしょうか?

ハノイの不動産の運用利回りは、今のところアパートであればだいたい6%といったところです。日本の都市部と水準的にはあまり変わりませんが、長期化するデフレ経済や少子化の影響もあって日本は今後は下落が予想されます。

ハノイの不動産の将来にへの見通しはいかがでしょうか?

ハノイの場合は依然として発展途上にあり、物価の上昇も続いています。都市の中心地域だけでなく、郊外に当たるエリアでのマンション建設も活発に行われています。地下鉄(ハノイメトロ)に代表されるように、今後は交通インフラの整備がさらに進んでいくことでしょう。そうした状況をみると、ハノイの不動産市場はさらに伸びが期待できます。また、日本のように賃貸で回していくのではなく、ハノイの物件を持っていれば今後キャピタルゲインも期待できます。

確かにハノイの街を巡ってみると、あらゆるところにマンションが立ち並んでいますね。村尾さんがお考えの「今後の攻め方」といったようなものがあれば教えていただけないでしょうか?

「地下鉄ができる」のは大きなインパクトになると思います。なるべく「中心地に近くて、かつ地下鉄が走る路線沿い」はやはり不動産開発がどんどん始まっていますから、こうしたエリアの物件をできるだけ多く紹介できるように努めています。

地下鉄の沿線で販売価格はどれくらいなのでしょうか?

物件の富裕層の投資対象は平米単価20~30万円程度、中間層は平米単価10~15万円程度の物件といったところでしょうか。高いものですと平米単価40万円(※)位する物件もあります。

仮にこうした物件を購入したとして、借主はどんな人たちが想定されますか?また、売却のチャンスについてはどうお考えになりますか?

現在のハノイのマンション賃貸市場でいうと、借りて住む人はほとんどが外国からの駐在員です。こうした人々が出勤するのに便利なエリアに物件を持っていたほうが当然のことながら「貸しやすい」わけです。ベトナムの方は「月々1,000ドルも1,500ドルも出して借りるなら、買ったほうがいい」と考えます。ただ、前述のように、購入された方は最終的に「売却してキャピタルゲインを得る」のが目的と思われますので、そう考えると地下鉄が開通してからの値上がりを期待したいといった感じですね。

村尾さんはベトナムでの不動産投資を考える日本人クライアント向けにどういったサービスを提供していますか?

2015年にベトナム政府が外国人個人による不動産物件購入の規制を緩和したことから、マンションや一軒家の仲介業を行っています。しかし、購入を取り巻く法律や条例、商習慣が日本や他国とは違うので、積極的に取り組めないと考えている方も少なくありません。そんな中、私どもでは日本とベトナムの不動産マーケットの違いに始まり、契約の段取りをご説明。さらには、ご購入後のお手伝いについても提案しています。

不動産といえば、物件購入だけでなく、オフィスや住居の賃貸をもカバーされていると思いますが、そういった業務についてはどうご対応されていますか?

こちらへ進出されてくる企業様に対し、オフィス・店舗物件の紹介、工場建設用地の提案、さらに駐在員をはじめとする日系企業スタッフの皆さん向けの住宅物件の仲介もお手伝いしています。最近では、ベトナム人オーナーが持っているアパートやマンション物件に住まれるケースも出てきていますが、こうしたオーナーさんは外国人とのやり取りに慣れていないことからいろいろなトラブルも起こっています。皆さんにより快適にベトナムでのお仕事、生活をしていただくために、スムーズな手続きのためのお手伝いをしています。

最後に、村尾さんは今後、ハノイでの不動産マーケットに対し、どのように貢献されていきたいとお考えですか?

この街で不動産開発が急速に進んでいるのは誰の目にも明らかです。日本で培った不動産サービス業の経験を生かして、激動するハノイの街で中長期を見据えた持続性のあるビジョンを持った事業展開を行なっていきたいと思っています。その結果、現地の人々の雇用の機会創出であったり、さらにはベトナムの経済発展にお手伝いできれば嬉しいですね。

インタビューのお時間ありがとうございました。

ありがとうございました。